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2010年 センター試験 政治・経済 追試験 大問1 問7

2010年 センター試験 政治・経済 追試験 大問1 問7

 

問7、下線部g(内閣)に関連して、現行の日本の内閣制度についての記述として誤っているものを次の①〜④のうちから一つ選べ。

国務大臣過半数は、国会議員でなければならない。
②内閣機能強化のため、内閣官房に代えて内閣府が設置されている。
③特別会の召集があったときは、内閣は総辞職しなければならない。
内閣総理大臣が主宰する閣議により、内閣はその職権を行う。

 

 

 

 

 

 

 

いかがであろうか。
なお、正解の選択肢は②である。

 

選択肢②「内閣機能強化のため、内閣官房に代えて内閣府が設置されている。」とあるが、「内閣官房に代えて」とあるからには内閣官房は存在してはいけないことになってしまう。現実には内閣官房は存在し、現在の内閣官房長官菅義偉氏である。

 

では、順に選択肢を見ていこう

選択肢①「国務大臣過半数は、国会議員でなければならない。」
これは正しい。日本の国務大臣は、基本的には国会議員から登用されるが、小泉政権下で経済政策を推進し「小泉・竹中改革」と呼ばれた竹中平蔵氏のように、民間人を大臣に登用することが可能である。なお、2003年に製造業への派遣を解禁した労働派遣法が小泉政権下で改正されているが、その後2009年に竹中平蔵氏は人材派遣大手パソナグループの会長に就任しており、格差を拡大させた張本人がその利益を享受しているとして未だ竹中氏を批判する声は根強い。なお、議院内閣制発祥のイギリスでは内閣を構成する閣僚は皆、国会議員でなければならない。対照的に、三権分立が厳しいアメリカでは、基本的に閣僚は議員を兼任することができない。行政権が立法権と結び付くと三権分立が保たれなくなると考えられているためである。

 

選択肢④
内閣総理大臣が主宰する閣議により、内閣はその職権を行う。」
正しい。なお閣議は原則非公開であるが、過去に小泉政権閣議を公開したことがあり話題となった。テレビなどでよく見かける、総理大臣や閣僚が椅子に並んで座っている光景は、閣議終了後の光景である。

 

選択肢③
「特別会の召集があったときは、内閣は総辞職しなければならない」
問題はこれである。この問7を解くためには選択肢②が虚偽の内容であることが分かれば良いのだが、この選択肢③が正解であることを導くのは難しい。
まず特別会の召集とあるが、特別会とは、衆議院解散総選挙後30日以内に開かねばならない国会である。とすると、衆議院が解散されて、衆議院議員選挙も行われ、いよいよ次の総理大臣を決めようという国会が開かれる時に初めて前の内閣は総辞職するのか。常識的な感覚では、衆議院が解散された時に国会議員というのは職をひとまず失うわけであるから、内閣もその段階で総辞職しているのではないのか、などと考えるわけであるが、実はそれは正しくないのである。
日本国憲法第70条には次のようにある。
「〔内閣総理大臣の欠缺又は総選挙後の内閣総辞職内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。」

この誤解を生んでいる原因として考えられるのは、緊急集会の存在ではないか。日本国憲法第54条2項には、衆議院解散中に参議院の緊急集会を開くことができるということが規定されている。
ただし、この参議院の緊急集会を求める行為主体は「内閣」であるとも規定されているから、この参議院の緊急集会のイメージだけが独り歩きしている感もある。

また、そもそも衆議院の解散というのは本来は、内閣への不信任決議に対抗する手段として実施されるものでもあるから、衆議院が解散された時点で内閣も総辞職していてはよく分からないことになってしまうという見方からの解答も可能だろう。

ちなみに、この選択肢③はこの日本国憲法第70条の条文を知らなくても今となっては解答することができる。
2017年秋の衆院選で、他の候補者たちがみな地元の選挙区に帰り選挙活動に勤しむ中、小野寺五典防衛大臣は地元に戻らず防衛省に残り北朝鮮を監視警戒するというニュースが流れたためだ。これは衆議院解散後も内閣が活動していなければ不可能な話である。恐らく、日本国憲法第70条の規定も、このような、例えば衆議院解散中に政治が行えないと他国に対し丸腰になってしまうということを回避するという設計思想から日本国憲法に盛り込まれたのではないか。

 

2010年の段階ではこの解答の仕方は不可能で
あったかもしれないが、日頃からニュースを見ることの重要性を痛感させる良問であった。
これからセンター試験を受けるという人も、そうでない人も、日頃からニュースを楽しんで見てみてはいかかだろうか

 

 

 

文責:フィロソフィア愛知