近年、京都大学熊野寮は年に数回、京都府警察等による家宅捜索(捜索差押)を受けている。その際に、大勢の機動隊員が投入されていることはご存知の方も多いかもしれない。

緊急
— 熊野寮広報局 (@kuma_d_fes) 2025年10月31日
ガサが来ました!
相変わらず大量の機動隊を動員して、寮生に対する令状呈示を渋って
います!このような不当かつ不毛な家宅捜索はいい加減やめていただきたい! pic.twitter.com/fxxEAHlF8n
これに対して、「熊野寮は機動隊員の新人研修に使われている」という言論が根強く存在する。
「京都府警はガサ入れの新人研修に、安全だが思想だけ過激な熊野寮を使ってるのだと愚考しています」
京都府警はガサ入れの新人研修に、安全だが思想だけ過激な熊野寮を使ってるのだと愚考しています https://t.co/ek7eUQARTN
— cva beatz / Kenshin Shiiba (@cvabeatz418) 2025年11月2日
さらに、一部ではこれを茶化して面白がるような向きさえ見られる。
確かに、実際に機動隊員と対峙すると、高卒で警察に入ったばかりか?と思われるような若い隊員も多い。「熊野寮が機動隊員の新人研修」に使われているのか、本当のところは警察関係者にでも聞かない限り(あるいは聞いたとしても)分からないだろう。
しかし、こうした「熊野寮は機動隊員の新人研修」式の言論は、熊野寮において家宅捜索の時に実際に起こっている数多くの人権侵害を矮小化しかねないものであり、大きな問題がある。この「新人研修」説の危険さは、それが笑い話のように語られることで、現実の違法行為の深刻さを覆い隠してしまう点にある。
熊野寮における警察の人権侵害や、法律の適法な執行とは思えない事例は、枚挙にいとまがない。例を挙げると、
・寮生の求めに対して、捜索差押許可状を呈示しない。(違法)
・警察手帳を呈示しない。(違法)
これらについては、以下の記事に詳しくまとめた。
philosophiaichi.hatenadiary.jp
さらに、
・許可状に定められた捜索とは無関係な寮生のバイクのナンバーをひかえる。(違法な証拠収集)
・捜索と無関係の大勢の寮生に対する撮影を行う。(違法な証拠収集)
・警察官(機動隊員)が寮生に対して暴行を加える。(救急車が呼ばれたこともある)
最後の例については、昨年(2024年度)怪我をした寮生を原告とし、京都府を相手取った国家賠償請求訴訟(国賠訴訟)にまで発展している。
こうした警察による違法な捜索活動、人権侵害に思いを馳せれば、「熊野寮は機動隊の新人研修」に使われているという言説が、いかに現場で実際に起こっていることを無視しているか。また、現場で市民の権利を守るために闘っている熊野寮生に対する冒涜であるか、理解できるだろう。
実際、当事者である熊野寮自治会は、家宅捜索のたびに、以下のような正式な文書で抗議声明を出している。
この現実を知った上でなお「新人研修」と語る人は、自らの倫理観と、社会に対する感受性を改めて見つめ直してほしい。
そして、この記事を読んだ多くの人が、この記事の内容に基づいて「熊野寮は機動隊の新人研修」という言説を注意し、世論を正していくことが求められます。それが、警察による不当な捜索、違法な活動への抑止力に繋がるのです。
近年、大川原化工機事件など、世論を騒がせる警察の人権侵害は、繰り返されています。熊野寮に対する警察の捜索差押における違法な活動も、これに類するものです。ぜひ皆さんと共に、理不尽な振る舞いを繰り返す警察に対して正しく怒り、社会をより良いものにしていきましょう。
なお、本文中に登場する国賠訴訟の原告とは、何を隠そう本記事を執筆している私のことです。国賠訴訟の回想録が収録された雑誌「季刊contextra」が発売されているので、ご興味のある方はぜひ。Kindleで800円です。
https://amzn.asia/d/1DmgvzK
vol.1「卒寮文集」をつくりました。
— 季刊contextra (@contextra_zine) 2025年8月10日
舞台は京都大学の自治の砦にして青春の坩堝、学生寮。そこで暮らし、いずれ出ていく私たちにとって、学生寮という空間は何だったのか。それを経験した私たちはどうやって卒寮していくのか。 pic.twitter.com/goJaDJpBJc