今後、旅の日記を書くために用意したブログ

今後、旅の日記を書くために用意したブログです。今のところ旅に出る予定は無いので、旅の日記以外のことばかり書いています。

なぜ山に登るのか

イギリスの登山家ジョージ・マロリーは、新聞記者にこう聞かれ、こう答えたという。

「なぜ山に登るのか?」

「そこに山があるから」

 

 

私は、どうして山に登るのだろうか。そんなことを考えたことも一度や二度ではない。

私と登山の、最も明らかで影響的な出会いは高校で山岳部に入ったことだろう。それまで登山といえば、わたしの心の故郷である城崎温泉に帰郷した際に、父と来日岳と呼ばれる山に数回登ったことがある程度だった。一体何がそんな私を山岳部へと惹きつけたのかは、今となってはもはやあまり分からない。しかし、3年間の山岳部員としての日々で得られた知識、登山経験、交友関係は今の私にとってはかけがえのないものとなっている。

 

私は昨年(2019年、令和元年)、計7つの山に、のべ10回登った。六甲山、比叡山愛宕山にはそれぞれ2回ずつ登った。10回のうち2回は高校時代にともに山に登った仲間と登り、2回は高校の山岳部の月例山行にOB参加、3回は大学の授業で登らせてもらった。木曽駒ヶ岳は昨年わたしが登った山の中で最も標高が高い山であり、今までに私が地に足をついて到達した最も標高が高い地点でもある。そして、残り3回は登山の経験が私に比べてそれほど多い訳ではない人も誘って、いわば登山の魅力の布教活動として私が計画し実施したものである。

 

山に登ることは、多くの場合しんどい。たとえ大人数で登っていても4人程度のパーティーで登っていても、登っていて息が切れて会話しないことはある。まして、昨年わたしも一度だけさせてもらったが、地形図を見ながら隊のペース配分を考えていつも先頭を歩いてもらっている人には頭が上がらない。登山というのは本源的に自己責任の活動であるから、後ろを歩く者も本来はちゃんと地形図を読んで歩を進めなければならないが、これは意外に難しいことであって、ちゃんと山に登る前に自宅でコピーに線を入れたりなどして山域の様子を頭の中に入れておくのが、せいぜい最も有効な対策だろうと思う。

 

山岳部として登山していた時には、高体連主催の登山大会というものが年に数回開催され、これに参加していた。登山大会における歩行は、大変しんどかった。重い荷物を背負って、予め決められた道を読図しながら、時間を守って歩かなければならない。そこには、周囲の景色を楽しむ余裕など介在する余地がなかった。そう、景色。高校一年の時の合宿で登った北アの蝶ヶ岳という山の、森林限界で視界が開ける瞬間の景色を私はよく覚えている。繰り返し山に登る多くの人々が、山に登り続ける理由として他では体験できない景色の美しさを挙げるだろうことはもはや否定できないと思う。

 

山岳部員の中には、高校一年の夏合宿で自らが春に下した決断を後悔する者が毎年何人かいるらしい。重い荷物を背負って、いつ着くとも分からないテン場を目指して、先輩たちに遅れないようについていかなければならない。そんな"極限的状況"でなくても、山に登っている時、"なぜ山に登るのか?"と考えることはそれほど不自然なことではないと思われる。"なぜ山に登るのか?" 景色が美しいから、一緒に登る友人がいるから、大学の単位が必要だから、理由を考えることは簡単 しかしそれを一つに決めることは難しい。人が、私が、山に登る理由は、動機は、多くの要因の複雑系である。そう思い至った時、"そこに山があるから"と喝破してみせたマロリーの偉大さ。

 

 

""という存在は、そこにある(彼の場合エベレスト)具体的な山でもあり、登山を通じて一期一会に知り合った人々、友人と楽しむ登山そのもの、言葉を失うような絶景、実際に山に登るのでなくても下界での諸々の活動、そういったものを包摂し、体現している言葉なのではないか。"なぜ山に登るのか"という懐疑的な姿勢ではなく、登山という行為の私にとっての主観的な重要さに気が付いた。景色も、人も、登山するということも、そのうちの何かだけが他をおさえて重要だということは決してない。自分が"山"という現象を通じて経験する全てのことが、主観として重要だ___________

そんなことを考えながら私は、深夜2時にこんな文章を書いています。以前から、"なぜ山に登るのか"ということに関して、まとまった分量の文章を書いてみたいと思っていました。なぜ急に書こうと思い立ったのが今だったのかは分かりませんが、"そこに山があるから"ということでどうぞよろしくお願いします。僕はこれからも山に登り続けると思います。そんなに危険な山には登らないと思いますが、登ると思います。一緒に登ってくれる人も、TwitterLINEで募集すると思います。その時はどうぞよろしくお願いします。"なぜ山に登るのか?"は実際に山に登った人だけの特権ですよ

(2000字)

 

文責:高校に卒業文集が無かったのを少し残念に思っている人