今後、旅の日記を書くために用意したブログ

今後、旅の日記を書くために用意したブログです。今のところ旅に出る予定は無いので、旅の日記以外のことばかり書いています。

なぜビットコインを持つのか?

ビットコイン(以下、BTCと表記)を初めとする暗号資産は現在、その普及と規制が同時に進んでいる。エルサルバドルのようにBTCを国の通貨にしてしまった国は例外としても、インドやロシアなど、今まで暗号資産が普及することに慎重的だった国も、その保有や売買を認めるようになりつつある。一方で、中国のように暗号資産の保有、売買、採掘などを完全に禁止している国もある。BTCはその設計思想から言って、政府(国)と気持ちよく共存できる関係にない。ハイエクが主張したような通貨の自由競争は、例え政府が民主的に選ばれていたとしても、いやむしろそうであるからこそ恣意的に発行される各国中央銀行法定通貨を、いずれ駆逐してしまうだろうからだ。政府の管理の手が届かない通貨経済圏で経済が行われることほど、法定通貨の威信を損なうものはない。過去10年ほど、BTCの法定通貨に対する価値は右肩上がりであり、その傾向は今後もしばらくは続くだろうが、BTCが世間に通用するようになればなるほど、それは世界の諸政府によって禁止されるリスクが高まる。長期的にBTCを保有することには、そのようなリスクがあることを認識しておくべきだろう。

BTCを始めとする暗号資産を保有している人を、あえて3つのグループに分けてみようと思う。

1、完全に金儲け(投機)目的でBTCやアルトコインを売買している人

2、長期投資目的で主にBTCやETHを保有している人

3、BTCの設計思想に共鳴し、信頼できない政府からの資産逃避目的としてBTCを保有している人

このうち、1に該当するデイトレーダーのような人はあまりBTCを持っていないのではないかと思うので、話から除外する。なぜビットコインを持つのか?という問いに対して、2と3のいずれのスタンスを自分が取っているか、あるいは気持ちとしてどれくらいの割合ずつなのか、意識しておく必要があると思う。先ほど、長期的には政府によりBTCが禁止される(つまり保有が犯罪になる)ことを想定しておく必要があると述べたが、2に該当する人は長期的にはBTCを保有すべきではないと考える。あくまで長期投資と割り切って、タイミングを見計らって他の安全な資産(法定通貨を安全と考えるならば法定通貨にですが!)に変えておく必要があるだろう。一方で、全く同じ想定でも3に該当する人は、むしろBTCを持ち続けなければならない。なぜならば、そのように政府によって個人の富が没収されるような事態(1933年の大統領令6102号や、戦後日本の預金封鎖など)において、個人の富を安全に逃避させる方法こそが、まさにBTCであるからだ。The Bitcoin Standardの著者サイファディーン・アモウズは、暗号資産交換所にBTCを置きっ放しにしておくことは望ましくないと考える。有事においては、交換所から暗号資産を移動できないと想定されるからだ。定期的に、個人のwalletに資産を移しておくべきだと主張する。

そのような有事において、BTCを保有し続けることにもリスクが無い訳ではない。暗号資産の保有が政府によって禁止されている状況下で、暗号資産を保有し続けることは、当たり前だが、政府によって身体を拘束される危険性がある。そして、BTCに採用されているブロックチェーンの分散台帳からは、その性質上、過去の全取引を調べることができる。これはつまり、BTCシステム上の個人と、現実世界の特定の個人とが結びついた瞬間に、むしろBTCを保有していることによって、資産の移動が公開されている状態になってしまうということだ。BTCシステムとしての個人の秘匿性は必ずしも、現実世界における個人の資産移動の秘匿を意味しない。暗号資産交換業者にマイナンバーや自動車免許を提示して、BTCを購入するような行為は、2の長期投資の目的としてならまだしも、3の資産逃避の目的としては、完全に意味がない。

それでは、3の資産逃避の目的としてBTCを保有することはできないのだろうか?交換業者を通じて購入するのではなく、自分でマイニングしたBTCを、現実の個人が特定できないような形で移動させることによってのみ、それは可能であると考える。そしてBTCの保有が安全になった段階を見計らって、BTCを他の資産に解凍する。これしか方法がないと思う。そして重要なことは、有事においてそのような犯罪を犯す勇気があるかどうか、よく検討しておくことだと考える。

以下のtweetを見て、BTCを保有することの意味について書いておきたいこと、以上。この文章は他の多くの人が書いたBTCについての論文、記事、本、tweetなどに多くを負っています。