今後、旅の日記を書くために用意したブログ

今後、旅の日記を書くために用意したブログです。今のところ旅に出る予定は無いので、旅の日記以外のことばかり書いています。

自作自演な京大の履修制度改革

以前、以下の記事で、京都大学は(学部によっては)156単位という、大学設置基準124単位を大幅に上回る"過剰"な卒業要件の単位数を自ら学生に課しておきながら、6割以上の学生が1回生の内に60以上という単位数を取得していることを"過剰"であると問題視し、2020(令和2)年度からの入学生を対象に半期で30単位(つまり年間で60単位)までしか履修を認めないというCAP制を導入するという、甚だ一貫性を欠いた矛盾した政策決定を行い、学生の負担を増大させているということを指摘し、これを批判しました。

philosophiaichi.hatenadiary.jp

 

今回は、京都大学の各学部の卒業要件の単位数をまとめた上で、さらに入学年度の違いによる卒業要件の単位数の変遷を調べ、"過剰"とされる学生の取得単位数が、制度の変更という形で構造的に作り出されたものであるという可能性について指摘します。

 

まず京都大学の各学部の卒業要件については以下にまとめられています。

www.kyoto-u.ac.jp

ここから、各学部に関して、最終的な卒業要件の単位数を調べたものを以下に示します。

 

総合人間学部:128→140(平成27年度以前 → 28年度以降入学者)

文学部:140→156(上に同じ)

教育学部:140→156(上に同じ)

法学部:128→144→136(平成27年度以前→28から30年度→31年度以降入学者)

経済学部:140(平成30年度以降入学者)

理学部:132→128→140(平成24年度以前→27年度以前→28年度以降入学者)

医学部:医学科は不明、人間健康化学科はコースにより145〜153単位

薬学部:薬科学科は142、薬学科(6年制)は196(2018年度以降入学者)

工学部:144

農学部:132→144(平成27年度以前 → 28年度以降入学者)

 

このようにまとめてみると、大きく見て平成27年度以前と28年度以降の入学者を境に、卒業に必要な単位数が大幅に増加していることがわかります。(本記事公開後に受けた指摘によると、どうやら語学の1コマあたり単位数が1から2に変更されたようです。)

以下のリンク先の2回生進級時アンケート報告書は、平成28年度(つまり平成27年度入学者が対象)以前と、平成29年度(平成28年度入学者が対象)以降の現在とでスタイルが異なり、前者には1回生での取得単位数を問う質問がない(出席コマ数を問う質問はある)ため、単純には比較できませんが、卒業要件が取得単位数を増加させる方向で調整されたことは、1回生での取得単位数を増加させこそすれ、減少させたということはまず考えられないでしょう。

www.z.k.kyoto-u.ac.jp

とするならば、卒業要件に大きく変更が加えられた平成28年度以降入学者の、1回生における取得単位数を見ても、それは多いに決まっているのであって、それを根拠に1回生での履修単位数に厳しい上限を設けるというのは、半ば自作自演的ではないでしょうか。

そもそも、平成28年度以前の2回生進級時アンケート(平成27年度以前の入学者が対象)に、1回生での取得単位数を問う質問がないということそれ自体が、それまでは国際高等教育院も学生の1回生での履修行動、及び取得単位数に特に関心を示さず、問題意識を持っていなかったことの他ならない表れであって、そこにどういう力学が働いて今日のような事態になっているのかは、非常に興味があるところです。

 

最後になりますが、東京大学京都大学のカリキュラムを比較した以下のブログから、東大との比較で京都大学について言及している部分を引用することをもって本記事を締めたいと思います。

daitansen.work

「(京都大学は)一見して単位数が多いことがわかるかと思います。2016年度から教養課程の科目を10単位前後増やしています。結果として卒業に必要な単位数も増えています。京大の自由なイメージからすると取得単位が増えて授業も増えるというのは意外な感じがします。

 

「先ほど京大は単位数を増やしたと書きましたが、これは珍しいことです。卒業単位は124単位以上と決まっていますが、現在は学修の実質化(1単位を取得するために45時間学修すること)が求められており、どの大学も卒業単位数は減らす傾向にあります。東大も同様です。

1単位当たり45時間の学修という原則からすると、1週間45時間学修するとしても124単位だと1年あたり31週間の学修が必要な計算になります。

これが10単位増えるということは1年あたり2~3週間分多く学修することになります。ここまでの負荷を高める必要があると京大は考えたのでしょうか?」