自分は指示語(「それ」など)を、それもかなり意識的に、使わずに文章を書いているということには数年前に気づいていたが、逆に自分が他者が書いた文章中に登場する指示語に対していかに注意を払わずに他者の文章を読んでいたかということが浮き彫りになったのはここ1年のことであって、というよりむしろ、そもそも文章中の指示語を意識的に発見したり、指示語の指示内容を措定したりという指示語運用の根幹に関わる能力が自分には欠如していたために、いまやそのような能力を十全に獲得したとまでは言わないまでも、自分は自分の文章中に指示語を混入させることを無意識的に意識して防いでいたのではないかというような気がする